今野涼二のすべて。 第10回 / 全16回
すべてを捨てて、オーストラリアへ
2023年、私は会社を退職した。
周囲からすれば、不思議に見えたかもしれない。
若くして管理職になり、高い収入を得ている。
その環境を自ら手放す理由など、普通は見つからない。
だが、私は自分の人生をこのまま終わらせたくなかった。
会社を離れた後、ボディビルにも挑戦した。
そして、英語もろくに話せないままオーストラリアへ渡った。
日本では、営業成績を上げれば評価された。
収入も、肩書もあった。
だが、オーストラリアでは違う。
日本で何億円の不動産を売ったかなど、誰も知らない。
営業でいくら稼いだかも、何の意味も持たない。
言葉が通じなければ、思うように仕事もできない。
実際、アルバイトを解雇されたこともあった。
貯金も減っていった。
日本にいた頃の自分なら、考えられないような生活だった。
しかし、私はこの経験を通じて、肩書が外れたときに残る人間の価値について考えるようになった。
何者でもなくなったとき、自分はどう行動するのか。
それを試された時間だった。